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2015年7月28日 (火)

「八日目の蟬」 角田光代 を読んで

 角田(かくた)光代さん、初めて読みました。

 ここ数年に読んだ本を振り返ると、夫のおすすめ以外は、映画やテレビドラマになったお話が多いのですが、こちらも2011年に永作博美 主演、 井上真央 助演 で映画化されています。
 映画のキャッチフレーズが「なぜ、誘拐したの? なぜ、私だったの?」「優しかった お母さんは、私を誘拐した 人でした。」で、表紙に書かれていましたので、 子どもを誘拐するお話なのだな、と知っていて、読みたいけど怖い、という心境でした。

 先日、たまたま古本屋さんで見かけ、おそるおそるページを開くと、プロローグ(0章)から引き込まれ、思わず買いました。
 

 角田光代さんは、Wikipediaによれば、1967年生まれ。
 「八日目の蟬」は2005年11月からに読売新聞夕刊に連載、2007年に刊行されていますので、執筆時は38歳。ちょうど、私が子どもを身ごもったた年齢と同じです。

 主人公の希和子の赤ちゃんへの思いがわかりすぎて痛かったです。

 不倫相手の子ども(恵理菜)を誘拐して逃亡を続ける希和子が出会う女たちも、彼女の子どもへの思いを感じて、怪しいと思いながらも、あるいは本物の母子と思い力を貸します。
 1990年代に問題になっていた、再開発による地上げ、オウム真理教や統一教会といった宗教団体などの社会情勢も織り込まれています。
 希和子はかなり生活力があり、危機を事前に察知して逃げていきます。

 そんな希和子が変わっていくのが、最後の逃亡先の小豆島です。
 小豆島の海や山、お寺、島の人の言葉などが、先の見えない逃亡生活を送る希和子を癒していきます。
 自分と子どもが村祭りに行った写真が全国紙に載り、捕まる予感がしても「決めたことがある。ぎりぎりまでここにいるということだ。」と決め、高松に逃れる直前に草壁港で捕まり、恵理菜と引き離される。ここまでが0章。

 2章は恵理菜の物語。
 4歳の時に実の家族の元に戻るが、両親となじめず、大学生になり、不倫相手の子を妊娠してしまう。そこに、子ども時代の知り合いが訪ねてきて、事件のことや産まれてくる子どものことに、ともに立ち向かっていく。
 ラストは恵理菜が、子どもを産むことを決意し、新岡山港から小豆島へ渡るシーンです。
 「そのとき、なんだろう、私の目の前がぱあっと明るくなって、景色が見えたんだ。
  海と、空と、雲と、光と、木と、花と、きれいなものぜんぶ入った、広くて大きい景色が見た。
  今まで見たこともないような景色。
  それで私ね、思ったんだよ、
  私にはこれをおなかにいるだれかに見せる義務があるって。
  海や木や光や、きれいなものをたくさん。」

 恵理菜だと知らずに、フェリーの待合室でその姿を眺める希和子も
 「いつかは自分も海をわたることができるだろうか。」
 と小豆島へ思いをはせます。
 この小説の主役は、小豆島のような気がします。


 2年前に、小豆島へ家族で行ったときに、壺井栄の「二十四の瞳」のことを書きました。
 http://tokidoki-naikai.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-4f57.html

 吉村 昭の「海も暮れきる」という小説も、小豆島が舞台です。
 「咳をしてもひとり」「いれものがない 両手でうける」などの口語自由俳律を作った 俳人 尾崎放哉が大正十五年に結核で亡くなるまで、小豆島の西光寺の墓守として過ごした八ヶ月間が、小豆島の四季や漁師の老夫婦との交流など中心に描かれており、感銘をうけました。。


 「二十四の瞳」
 「海も暮れきる」
 「八日目の蟬」
 たまたま、私の中で小豆島三部作となりました。
 岡山からフェリーで70分の小豆島ですが、実際に行ってみると、意外に渓谷もあって山も険しく、気候は厳しく感じました。醤油や素麺が名物なのもうなづけます。
 また、お寺が多く、放哉はお遍路さんが来る春を待ちわびながら亡くなりますし、希和子も仕事の帰りに子どもとお寺を回ります。
 作家の創作意欲をかきたてる島、なのかもしれません。
 
 
 

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