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2012年12月22日 (土)

冬の風物詩~ノロウイルス感染症

 先日、ブログのテーマを「落ち葉」に変えたばかりですが、あっというまに落葉樹は丸裸になってしまい、慌ただしく雪山に変えてみました。昨年、雪山デビューしてすっかりとりこになった我が家の男子達。今シーズンはいつ行かれるでしょうか。

 12月に入り、嘔吐下痢の患者さんが増えて来ました。12-3年前、東京の下町の救急病院に勤めていた時は、冬から春の間、救急外来の点滴台が足りなくなるほど嘔吐下痢の患者さんが押し寄せたものでした。感染症科の先生から、「この時期の患者さんのほとんどはSmall round shaped virus(SRSV、小型球形ウイルス)が原因だよ」と教えていただきました。そう、今でいうノロウイルスです。当時は便の中のウイルスを電子顕微鏡で観察することでしか診断がつけられませんでした。

 その数年前の研修医時代に、私も病棟でカルテを記載していたら突然の悪寒、発熱に見舞われ早退。その晩に突然胃の膨満感と痛みがやってきて、朝まで嘔吐と水様下痢でトイレから出られない状態になったことがあり、おそらくノロウイルスにやられたのだろうと思うのですが、当時は知識はなく、数日自宅で療養したのちに復帰しました。

 そんな訳でノロウイルス感染症は昔からこの時期に流行していたのですが、宿泊施設や介護施設などでの集団感染の事例が明らかになり、また診断キットが市販されたため、「下痢で休んだら病院へ行って来いと職場で言われました」と受診される方が後を絶ちません。残念ながら健康保険で検査できるのは3歳未満や65歳以上で重症化が懸念される方、免疫を抑える治療を受けている方、など限られていますし、治療法が変わる訳ではないので、吐き気止めや整腸剤を処方して、手洗いの指導などを受けてお帰りいただいています。

 ノロウイルスが怖れられる理由はその感染力にあるようです。
 少量のウイルスでも感染・発症すると言われ、感染者の吐物が咳などでエアロゾル化したり、乾燥して舞い上がり口に入っただけでも感染するとか…そういったものを処理する時には、使い捨てのマスクやビニル手袋を着用できるよう、お家に常備しておくと良いですね。また、消毒にはエタノールやベンザルコニウムは無効で次亜塩素酸が有効と言われていますが、有機物(汚れ)が一緒だとすぐに効力が無くなるので、過信しない方がいいでしょう。石鹸と流水で手を洗ってウイルスを流すのが有効と言われていますが、症状がある間は手を拭くタオルは別にして下さいね、とお願いしています。

 嘔吐で発症する時は、胃が張ってほとんど消化されていない食べ物が出てくることが多いので「胃腸炎」を起こすのだと思っていたのですが、ノロウイルスが感染するのは十二指腸だそうです。ひどい場合は潰瘍ができることがあるそうですから、嘔吐下痢が治った後も食欲が出ないのはそのためなのでしょうか。嘔吐は半日、下痢は1日半から2日で治まって来るように思いますが、下痢が長引く方には絶食して水分(経口補水液など)のみにして、乳製品、柑橘類は当分控えるように指導します。「便がお水みたいなら、体が水分しか受け付けません。」とか「いつもと同じくらい尿が出るように水分・塩分を摂りましょう。」とか尾籠な話を毎週しています。(自分のクリニックだったら、きっと説明用の文書を作ってるだろうな…)
  

 ノロウイルスは人間にしか感染しません。トイレに流れた後、通常の下水処理では死なず、海の中で二枚貝の体内に濃縮されるのですが、別に貝には悪さをしません。それを食べた人間の腸の中で増えて、また流れて…生ガキは美味しいですが、若き日の苦しみを思うと、最近は夏が旬の岩ガキしか食べていません。
 先日、備前市の日生(ひなせ)で名物のカキおこを頂きました。一軒目の「タマちゃん」はカリっと焼けていて、安心でしたが、二軒目の「がんぞう茶屋」のは大粒の上、中は何となく生っぽい…(中心まで85℃以上で加熱しないと危ないのです!)潜伏期間の12~72時間はドキドキしましたが無事に過ぎました。

 ノロウイルス感染症は一回かかっても1~2年くらいしか免疫がもたないと言われます。
 子供の頃、1-2年に1回は教室で吐いて保健室で寝かされていた覚えがあります。
 大人になってからは、前述のエピソードの後、7-8年前にも生煮えのアサリを食べた後に少し気持ちが悪くなりましたし、3年くらい前に子供から下痢を移されましたが、フルに症状が出たのは一回きり。帰宅後の手洗いやうがいなどの感染予防に熱心でない割には、発症していないというべきか…
 発症していなくても調理前の手洗いは励行し、冬の風物詩とうまくつきあって行きたいと思います。

  

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