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2012年4月29日 (日)

大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ 中村仁一 を読んで

 桜が散ったと思ったら、初夏の陽射しを浴びてハナミズキが咲き、駆け足で季節が移っていきますね。
 ハワイ旅行の顛末も終わっていないのですが、先日の内科学会総会で宗教学者の山折哲雄さんの講演で紹介されていた本について書きます。

 表題はかなり過激です。著者は病院長・理事長職を経て60歳(2000年)の時から特別養護老人ホームの配置医をされています。不整脈の発作をきっかけに仏教の勉強をされ、1985年から「病院法話」を開催、1996年から「自分の死を考える集い」を主宰されていて、「知る人は知っている」存在だったようです。

 12年間の老人ホーム勤務で、最後まで点滴注射も、酸素吸入もいっさいしない「自然死」を数百例経験され、「死」という自然の営みは、本来、穏やかで安らかだったはず、と書かれています。(具体的には生命力が衰えてくると飲み食いの必要がなくなり、「飢餓」で脳内でモルヒネ様物質が分泌されいい気持ちになり、「脱水」で意識レベルが下がりぼんやりとして、呼吸が悪くなり酸欠から脳内モルヒネ様物質が分泌され、炭酸ガスによる麻酔作用により、痛みや苦しみもなく、安や恐怖や寂しさもなく、まどろみのうちに、この世からあの世へ移行することになると解説されています。)それを、医療が濃厚に関与することで、より悲惨で、より非人間的なものに変貌させてしまった。

 最近増えている胃瘻について、いのちの火が消えかかっている状態での胃瘻は、回復させることも、生活の質の改善も期待できないしどころかかなりの苦痛と負担を強いることになる、と胃瘻歴4年、85歳で亡くなった女性の関節が曲がって固まった手足の写真を載せています。「胃瘻が実施される理由として、医療者側の、できることはすべてしなければならないという使命感、また、家族側の、しないと餓死させることになる、見殺しにはできないという罪の意識を挙げています。その背景にまだまだ先と思った親の死が、いきなり目の前につきつけられ、もっときちんとかかわりを持っておくべきだったていう自責の念から延命措置である強制人工栄養に走るのが大部分、と厳しい指摘。辛くても「死ぬべき時期」にきちんと死なせてやるのが"家族の愛情"というものでしょう。その通り!と膝を打ちました。

 また、年寄りの最後の大事な役割は、できるだけ自然に「死んでみせる」こと、「自然死」を家族に「看取らせる」ことにあり、そのためには本人の決心、希望だけでなく、介護してくれる家族に負担をかけず、症状の急変した時の対応に不安を感じないよう、「信念」と「覚悟」が必要と説いています。「死ぬ時のためのトレーニング」について指南されていますし、自宅で事切れた時に家族が「保護責任者遺棄致死の罪」で取り調べを受けないように、死亡の確認と死亡診断書の発行をしてくれる家庭医が必要、と非常に実践的です。

 著者の死生観に影響を与えた父親の死にっぷり、「自分の死を考える会」のこと、人生の節目に生き方を振り返る「生前葬」のすすめ、意思表示不能時の「事前指示書」の重要性、超高齢者のがん(天寿がん)のことなど、たいへん読み応えがあり、幻冬舎新書\760はお買い得でした。某ショッピングサイトでは、「がんは抗がん剤や放射線などの治療で痛めつけなければ痛まない」というのは信憑性がない、というレビューがありました。この点に関しては、著者も「発見当時に痛まなければ」と注釈を入れられていますし(痛みがあれば当然病院で手当てを受けられます)、特別養護老人ホームへの入居者は「ぼけ」が進んだり、活動度が低い方が多いためかな?とも思います。がんに関する記述にのみとらわれない方が良いと感じました。

 私事ですが、明治生まれの父方の祖母は、脳梗塞で体も頭も不自由になり、自宅に戻って来ました。食が細ってきた最期の頃、介助しなから「なぜ食べないの?」と問うた私に「だって、おばあちゃんが長生きしたら、パパもママも(私の両親のこと)困るだろ」と澄んだ目で答えたので、返す言葉に困りました。それから数日後の夜中にひっそりと息を引き取ったのですから、見事な「死にっぷり」。その影響か、病院で点滴や人工栄養で生かされているお年寄りを診ると申し訳ない気持ちになりますし、本書の趣旨に強い共感を覚えます。何時かこの思いを仕事に生かせる日が来ますように。 

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コメント

お疲れ様です。
山折哲雄さんって、「親鸞をよむ」の著者の方ですよね。

ご健在で、講演活動もされているんですね。80歳は越されていると思いますが、お元気なことはなによりです。

「自然死」を心におきながら、動ける間は活動的に行動されている。見習いたいです。

では、よいGWを!(o^-^o)

adlerさん、いつも読んでくださってありがとうございます(^^)
山折哲雄さん、宗教学者でいらっしゃいます。
お元気そうで、とても80歳とは思えませんでした。
「医学と生老病死」というタイトルの講演で、40歳頃に十二指腸潰瘍からの出血で死にかけて、「現代医療に命を救われた経験を持ち、感謝しているが、」と前置きをされた上で、表記の「大往生したければ…」と「死にたい老人」という本を紹介されました。
どちらも、山折氏が若いころに、西行が断食で死期をコントロールしていたのではないか?と書かれたことを引用しているのだそうです。
そういえば、日経新聞に「危機と日本人」(だったかな?)というコラムを連載されていますよ。

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